以前に続きを書くと宣言してから3年8ヶ月、最初の記事読んだ人が入隊してたら士長になってるか退職済みだな。
入隊して入隊式前までの期間は「お客様期間」とも言われ、教官陣は比較的優しいとされている。
が、初日から「入る前に聞いてた話と違うぞ!」と広報官に電話で怒鳴ってた奴や、2日目に班付からどやされてた奴もいた。文句垂れてた方は3日目にはいなくなっていた。入隊式前だから退職にはならんのか、どうだろう。
教育側には名称が色々あって面倒くさい。教官と呼ぶのは幹部からだったか、実際に新隊員を1か10まで面倒を見る陸曹陸士は助教と呼ばれる。大概は3等陸曹が班長で補佐として陸士長が班付になる。他にも規模によるが中隊長、区隊長、区隊付、補給陸曹等々いる。
で、一番理不尽でおっかないのが班付である。事あるごとに激烈指導やら終わらない反省をしてくる。自衛隊の厳しさは班付から学ぶことが多い。逆に言えば班付の言う事を聞いていれば大半の問題は片付くと考えてよい。
教育隊によっては班付がいないところもあるそうだ。私の知る限りでは武山の教育大隊(常設)は班付が居なかったそうだ。ただ空挺団から来た班長も多く、厳しい中隊や区隊はそれなりだそうだ。私の同期は大隊長命令で「暴力及び過度な反省・指導は禁止」となっていたそうで、へなちょこなのも居た。
私のように普通科連隊に臨時に編成される教育隊もある。あるというか任期制は常設の教育隊ではなく、普通科、特科、施設科などの実働部隊で教育を受ける。編成は臨時なんだが、大概は毎年編成される。私の1期下は採用数が少なかったため、任期制も武山で教育を受けたそうだ。理由は前年、私が入隊した年にリーマンショックが起こり、退職者減による採用減とのこと。自衛隊は総員の数が決まっているので退職者が少なければ採用も少なくなる。
話は戻り、入隊式までの10日間くらいは駐屯地・隊舎での生活を覚えることになる。被服交付やら階級章等の縫い付け、健康診断、体力測定、半長靴の磨き方、迷彩服のプレス(アイロンがけ)方法、ベッドメイク等々主に雑務である。
ベッドメイクは「自衛隊 ベッドメイク」や「米軍 ベッドメイク」で画像検索をかければ出てくると思う。
訓練としては入隊式までに基本教練なるものを教えられる。行進や敬礼など、俗に言う「軍人っぽい動き」である。本物の自衛官を育成するので、っぽいではダメであるから中々に厳しくはある。とはいえ高校や大学で教えてくれるわけではないので、「ごっこ」っぽくはなってしまうのだが。
教練中、班付からは「入隊式は駐屯地の部隊が集合してお前らを見る。今年の新隊員はクソだと思われないよう、しっかりやれ!」と檄が飛ぶ。このあたりで「おぉ〜、軍隊っぽい」と実感してくる。
入隊式が終わると本格訓練開始である。
先に書いた雑務であるが、これは自衛隊では服務と呼ぶ。服務は公務員で使用される用語で「服務規程」となって規則化されている。自衛隊の規則を司るのは「自衛隊法」になるが詳細は知らん。たぶん公表されているはず。
ちょっと脱線して、自衛隊特有のといっていいのか、義務がある。これも自衛隊法に記されているものだが、
・指定された住所に住む義務
・上官の命令に従う義務
・品位を保つ義務
等々、他にもあったが忘れた。入隊した場合は暗記するまで寝られないので、必ず覚えられるので心配はない。服務は品位を保つ義務に入るので、だらしない服装や言動は特に指導対象となる。とともに自衛隊で最も機能していない義務なのは、ニュース報道などでお分かりになると思う。ルールがあれば必ず破る者が出てくるのは世の常である。
他にも戦闘間一般の心得とかいうのもあった気がする。自ら進んで上官の指揮下に入る、とかそんなの。12個くらいあって、これも覚えるまで寝られないので心配ご無用。
本格訓練が始まるとまずは体力作り、取り合えず走らされる。最初は3km次は5kmといった具合に増え、最終的には体育訓練で10km走らされた後にフル装具で2時間くらいハイポートさせられるようになる。
今は変わったそうだが、私の頃の体力検定は腕立て、腹筋、3000m走、ソフトボール投げ、立ち幅跳び、懸垂があった。合格ラインは高校で運動部に入っていたなら余裕でクリアできるが、出来る奴は徹底的に上を追及され、出来ない奴は顔から出る汁を全開にして懸垂していた。フルメタルジャケットに影響された助教がいると、ここで「あぁ?!懸垂の1回も出来んのか!努力してそうなったんか!コラァ!同期を背負って懸垂出来るまで鍛えてやる!」と檄られる。
自衛隊の筋トレは指導・反省にも利用される。昔は正座が主流だったようだが、ケガの原因になるので今では少なくなったと聞いている。無いわけでは無い。屈み跳躍や腹筋、空気椅子など色々あるが、やっぱり自衛隊といえば腕立て伏せである。
イメージは昔放送していた筋肉番付の腕立て決勝を思い出してもらえればいい。知らん人は動画サイトで確認してくれ。
自衛隊、なんでも規則化するのが好きで腕立て伏せの姿勢も決まっている。おかげさまでシゴキで腕立て伏せの姿勢を取り続けるなんてものもある。腹と背中に鉄板が入ったかのような直線を維持しなければならないが、長い時は30分以上姿勢をやらされて生まれたての小鹿の様になる。
試しに10分くらいTV見ながらやってみると良い、たぶん腰を悪くする。
自衛隊生活切っても切れない腕立てはこの時、体に叩き込まれる。基本的に激烈指導とかになると1時間以上腕立てをやるので、慣れるとエロい事考えたり週末の予定を考えたりしてやり過ごすようになる。時間が経つのが地獄のように長く感じるので、逃避するのである。
体力作りが本格化するように、服務も激烈に厳しくなる。ベッドメイクが汚いや水筒に水が入りっぱなし等で、知っている人は知っている台風と呼ばれるシゴキというかイジメだが、助教によって部屋中を滅茶苦茶にされる。大概その時に戦闘服のプレスが甘いやつは人形を作られる。私の場合は2段ベッドが屋上に上げられていた。
フルメタでデブがドーナツを隠していた小箱、アレをフートロッカーという。自由の無い居室でもフートロッカーだけはプライベートスペースになるので貴重品をそこにしまい、鍵をかける。当然鍵は自動ロックではなく南京錠かシリンダー錠なので、かけ忘れるやつが出る。「俺がこの世で最も許せないのは鍵のかかっていない小箱だッ!」と班付に見つかり「無くなったものがないか確認してやる」といって逆さにされて中身がドバー、たまにカビたパンが出てきたりする。そして中身を戻したフートロッカーを持って説教を聞きながら空気椅子、「同じ姿勢も疲れただろ?」と言われ屈み跳躍に移行、「足も疲れただろ?」となり最後は背中にフートロッカーを載せて腕立てでFAといった感じである。
課業時間内では体をイジメ、課業外では精神と体をイジメられるルーチンが3ヶ月続く。教育期間後半は慣れてくるので、ただ面倒くさいとしか感じなくなる。
訓練はそれ以外にも引き続き基本教練、班員を歩かせる分隊教練、銃の分解結合、射撃、掩体掘り等々様々な教育がある。私の記憶では、銃を武器庫から出したら大概最後にハイポートをした記憶がある。ハイポートは銃を持って走る例のヤツである。マニアでさえ武器を出したくなくなるくらいには辛い。
基本教練では、イメージしやすい敬礼や方向変換?右向け右等の他に、銃を持って行う執銃時の基本教練も行う。控え銃(つつ)や担え銃である。これも種類があって、執銃時の気を付けの立て銃、構え銃、下げ銃等々色々ある。かなり忘れた。
分隊教練は班を移動させるときに使用する号令で、縦隊右へ進め、分隊止まれ、駆け足前へ進めなど、列外に出て怒鳴ってるやつである。メシ行くのも風呂行くのも移動は全て部隊行動となるため、分隊教練が下手くそな奴が指揮を執ると側溝に落ちたり、反対方向に進んだりと大変である。あまりにだと同期から舌打ちされたり、課業後に同期から呼び出されて説教されたりもする。助け合いの精神である。
銃の分結は、特にこれと言ってないが、致命的に不器用な奴は分結の時間になると覇気がなくなる。部品を落として腕立ては風物詩にもなる。「規制子(ガスレギュレータ)さん、ごめんなさい!」と言いながら延々腕立てをする。
ある時、部品を落とした奴が腕立てをして班長から「どうだ?許してくれたか?」と聞かれ「ハイ!規制子さんは、もう俺の事はいいから他の部品を整備しろと言ってます!」の回答は座布団1枚だった。
他にも座学があるが、はっきり言って覚えてない。
暗記が苦手な奴は相当苦労してたが、コレはやってく内に覚えるので記憶に残らなかった。たまに新しい規則を作って助教に笑われたりしたぐらいである。
3か月目になると行進(行軍)や戦闘訓練、総合訓練などイベント盛りだくさんになる、射撃についても書きたいが、今回はこの辺で後日書くつもり。
といって前回は3年以上空いた